きみだけに、この歌を歌うよ




梓が……愁をここに呼んだ?

それはきっと、私を心配してくれていたからだろう。

慌ててここに来た愁から、梓の優しさが伝わってきて目の奥がじわりと熱くなった。



「杏里!もういい加減にしろよ!お前のそういうところが嫌なんだよ!」



聞いたこともないような、愁の怒った声。

私のすぐとなりに立って杏里ちゃんを睨む愁の目も、見たこともないくらい冷たい。



「ちょっ……ほんの冗談だってば?そんなに怒らないでよ、ね?」



杏里ちゃんは激怒する愁から目を泳がせたりして、ひどく動揺していた。



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