きみだけに、この歌を歌うよ
「お前のそういうところにはもうウンザリなんだ!こんなことしたって、俺はお前とは付き合わないからな!」
愁は鋭い瞳を杏里ちゃんから逸らさなかった。
「なによ……。もとはと言えば、愁が悪いんでしょ!私じゃなくて、こんなやつを選んだりするからよ!」
愁をキリッと睨む杏里ちゃんの大きな瞳には、涙がいっぱい溜まっていた。
「菜々にはお前にはないような、優しい心があるんだよ。影でこそこそ嫌がらせばっかするお前とは違ってな。だから俺は菜々が好きなんだ」
愁の口からでた『好き』の言葉に、身体がいち早く反応する。
心臓が身体を突き破ってしまうんじゃないかと思うほど大きく飛び跳ねて、全身が焼けるように熱くなってきた。