きみだけに、この歌を歌うよ
「いいって、菜々。菜々を守ったことに後悔はしてないから」
「でも……怒られちゃう。私なんか庇ったりしたせいで…」
「菜々のせいじゃない。俺が勝手にやったことだから。杏里を説得するなんて無理そうだから、いずれはこうなるだろうなってわかってたし」
そんな顔すんなよ、と私の目元に触れた愁の親指。
優しく涙を拭ってくれる、温かい愁の手。
「ごめんな、菜々。こうやって菜々を守ってやればよかった。杏里を説得してイジメを止めよう、なんて甘いこと考えてた俺がバカだったな…。杏里があんなにわからず屋だったとは…。もっと話せばわかる奴だと思ってたんだ」
首をぶんぶん横にふるたびに、涙がぼたぼた頬を伝う。
嬉しかった。
愁がきてくれて。
私のとなりに立ってくれて。
嬉しかった。