きみだけに、この歌を歌うよ
愁とまたこうなることを、私は夢にみていた。
もういちど、愁の彼女になりたい。
もういちど、愁のとなりを歩きたい。
泣いて泣いて、泣きながらなんどもそう願った。
……それなのに、わかったって頷くことができなかった。
ふと、九条くんの顔を思いだしてしまったから。
浜辺で歌を歌ってくれた九条くん。
音楽室でピアノを弾いてくれた九条くん。
カラオケでハンカチをかしてくれた九条くん。
私のことを、たくさん励ましてくれて、たくさん支えてくれた九条くんのことを思い出してしまったから。