きみだけに、この歌を歌うよ
「ごめん……いまさら何言ってんだって感じだよな…。ごめんな、困らせて」
笑いながら私から離れた愁は、どこか寂しそうだった。
私はなにも答えることができなかった。
「でも、俺は本気だから。俺にはやっぱり菜々しかいない。だからさっきのこと……考えておいてほしい」
言葉のとおり、愁の目はいつになく真剣だ。
私が小さく頷くと、愁はさっと背を向けて「じゃあまた」と残し去っていった。