きみだけに、この歌を歌うよ
「あらぁっ、菜々?そんなところでウロウロしてなにやってんの?」
九条くんの家の玄関先でウロウロしていると、お母さんが後ろから声をかけてきた。
ちょうど仕事から帰ってきたところみたいだ。
「九条さんに用事でもあったの?あ、もしかして息子さんに用事?」
「え?いやぁ……なにもないよ…。ただの通りすがりだから」
なんだか……恥ずかしい。
通りすがり、はちょっと苦しい言い訳だったか…?
「なんだかよくわからないけど…。九条さん、このところ姿を見ないからずっと留守なんだろうねぇ」
「そうなの?」
「そうそう。毎日玄関先の花に水あげてるみたいなんだけど、この1週間は見てないのよねぇ」