きみだけに、この歌を歌うよ




九条くんは、にこりとも笑い返してはくれなかった。

やっぱり……そっとしておいてあげた方がよかった?

迷惑だった?



「……って、思ったんだけど…その声だと歌えないかな…。ごめん……こういうテンションってウザイよね…」

「いや……いいよ。迷惑とかじゃないから。ただ……」



九条くんは話しの途中で、言葉をつまらせた。

私から逸らされた瞳は、また青い海へと戻る。

海を映すその瞳はやっぱり、悲しそうだった。



「ただ……?」



話しの続きを急かしてしまった。

遠くを見つめるような悲しい目をする理由が、知りたいと思ってしまったから。



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