きみだけに、この歌を歌うよ
オレンジ色に染まる空から目を逸らした九条くんは、黒いギターケースを手に立ちあがった。
「じゃ…今日はもう帰るわ」
「あっ……ちょっと。ちょっと待って…」
慌てて私も立ちあがって、思わず引き止めてしまった。
「なに?」
1歩足を踏みだしたところで振り返って、私をまっすぐに見つめるその目に光はなかった。
まるで、死んでいるかのよう。
生きる希望をなくしてしまったような、そんな表情に見えた。
「明日は……学校に来る?」
こんどは私が、九条くんを元気にさせたい。
私が、支えになりたい。