きみだけに、この歌を歌うよ




お母さんが亡くなってしまってまだ1週間たらずだ。

そうすぐにすぐ、気持ちをたてなおすことはできないだろう。

だからこそ、私の出番だと思った。

明るい性格が唯一のとりえだから、九条くんを纏う空気を少しでも照らすことができればなって。



「ねぇねぇ九条くんっ、聞いてくれる?」

「ん?」

「あのね、私、杏里ちゃんにやっと立ち向かうことができたんだよっ!」



校舎の裏に呼び出されたとき。

私ははじめて、思っていることを杏里ちゃんにぶつけることができた。

それは私の中で、大きな大きな成長の証なのだ。



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