きみだけに、この歌を歌うよ




「へぇ……そうか。頑張ったんだな」

「うんっ!私もやれば出来るじゃんって思ってさぁ!自分でもびっくりしたんだよぉっ」

「じゃあもう、海に向かって叫んだりする必要はなくなるな?」



ふっ、と笑いかけてくれた。

あまり笑うことのない九条くんは笑いかけられると、息をすることですら忘れてしまうときがある。



「うっ……うんっ!へへっ、すごいでしょ?」

「うん。菜々が芹澤に言い返すなんてぜったい無理って思ってたから。菜々も、勇気だしたんだな」



ぽんぽん、と私の頭を撫でてくれる。

だけどやっぱり、その目は悲しそうだった。



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