きみだけに、この歌を歌うよ
九条くんは、病気になってしまったことはあまり言いたくないみたいだった。
それはそうだろう。
心因性による病気だし。
おおっぴらに言いたくはないよね。
「ねぇ、心優くん。一緒に帰ろうよ?」
放課後になると、左となりの席に優乃ちゃんがニコニコしながらやって来た。
「うーん…どうしようかなぁ」
九条くんと優乃ちゃんの会話に、聞き耳をたててしまう。
さぁ帰ろうと思って立ちあがったところで、身体が石のように固くなる。
九条くんがどう答えるのかが、気になって仕方がない。