きみだけに、この歌を歌うよ
教室から出て走って走って。
校門を出てすぐのところで、先を歩く九条くんの後ろ姿を見つけた。
「九条くんっ!」
「おー……菜々か」
すぐ後ろにまできて呼びかけると、九条くんはビクッと肩を揺らしながら足を止めた。
「ねぇねぇっ、今日も海に行くのっ?」
「いや……今日は行かないつもりだったけど」
毎日かかさず海に行ってるのに?
と言いそうになったところで、はっと言葉を止めた。
そうか…。
歌えないって言っていたもんね…。