きみだけに、この歌を歌うよ
九条くんのことが好き。
だけど、愁に気持ちが動きかけてる私もいる。
「愁くん、本当に菜々のことが好きなんだろうね。よりを戻したくて必死な感じがすごくわかるよ」
「それは私もわかるよ。だから戸惑ってるんじゃん…」
「まぁ急いで決めることでもないしねぇ……。いいじゃん?もうちっと考えたら」
そうだね、だなんて話しながら階段を降りて。
また明日学校でね、と玄関の前で梓に手を降り別れた。
外は相変わらず雨だ。
ピンク色の傘をさっと広げると、緑の葉をしげらす桜並木を歩いた。
すると梓の家を出て家に向かってまっすぐ、5分くらい歩いた先にある、赤色の自動販売機の前に九条くんらしき人の姿を見つけた。