きみだけに、この歌を歌うよ




黒い傘からちらりちらりと見える、やけに整った横顔。

間違いなく九条くんだ。



黒い半袖のTシャツに、下は黒いジャージ。

ラフな格好だから、ただジュースを買うために出歩いているような、そんな感じだ。

九条くんは1歩ずつ距離を縮める私の存在に、気づいてないみたいだ。



「わあっ!」



九条くんのすぐ後ろまできた私は、驚かせようと大きな声を出した。



「うおわっ!」



九条くんはびっくりしたように声をあげて、手に持っていたペットボトルのジュースをするりと落としてしまった。



「あははははっ、大成功〜!どう?びっくりしたっ?」



< 467 / 545 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop