きみだけに、この歌を歌うよ
黒い傘からちらりちらりと見える、やけに整った横顔。
間違いなく九条くんだ。
黒い半袖のTシャツに、下は黒いジャージ。
ラフな格好だから、ただジュースを買うために出歩いているような、そんな感じだ。
九条くんは1歩ずつ距離を縮める私の存在に、気づいてないみたいだ。
「わあっ!」
九条くんのすぐ後ろまできた私は、驚かせようと大きな声を出した。
「うおわっ!」
九条くんはびっくりしたように声をあげて、手に持っていたペットボトルのジュースをするりと落としてしまった。
「あははははっ、大成功〜!どう?びっくりしたっ?」