きみだけに、この歌を歌うよ
私がいちばん一緒にいたいと思う人。
そばにいたい人。
それは愁ではなくて、九条くんだ。
私は九条くんのことが好き。
その気持ちにはもう、迷いはない。
「……」
「……」
私と九条くんのあいだに、言葉がなくなった。
そんなタイミングで、浜辺の方からはひときわ大きな歓声が聞こえる。
海上に、金色に輝くナイアガラの滝が現れていた。
このナイアガラの滝に見立てた花火は、この花火大会の最大の見せ場だ。
それでも、私は九条くんからちらりとも目を逸らさなかった。
九条くんも視線もまた、私に注がれたままみじろぎひとつしなかった。