きみだけに、この歌を歌うよ




「ごめん……。なんか俺、菜々を泣かせてばっかりだな」



少しの沈黙のあと、返ってきたの深く、長いため息。

私はふるふると、首をふった。



「九条くんのせいじゃない……」

「なぁ、菜々?」



九条くんが、優しい声で私の名前をよぶ。

俯きがちの私の顔をのぞきこむ九条くんは、微笑んでいた。



「2週間後のイベント、見にきてよ。もしかしたら高音は出せないかもしれないけど……それでも中音は出せるから、キーが低い歌なら歌えるし。上手く歌えないかもしれないけど、見にきてよ」



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