きみだけに、この歌を歌うよ




……どくん。

九条くんの強い眼差しが。

私の髪をなびかせる優しいそよ風のような声が。



私から平常心を奪う。

ドキドキして、ドキドキしすぎて、頭がおかしくなりそう。



「だから、楽しみにしてて。俺もそれまでに、高音を少しでも出せるように頑張るから」

「……うん」

「あっ!なんだ、もうナイアガラのやつ終わってんじゃん!いつの間に?」



九条くんは何事もなかったかのように、また花火に目を戻す。

私も九条くんの視線を辿るように花火を眺めるけれど、胸のドキドキはちっとも収まらなかった。



< 497 / 545 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop