きみだけに、この歌を歌うよ
……どくん。
九条くんの強い眼差しが。
私の髪をなびかせる優しいそよ風のような声が。
私から平常心を奪う。
ドキドキして、ドキドキしすぎて、頭がおかしくなりそう。
「だから、楽しみにしてて。俺もそれまでに、高音を少しでも出せるように頑張るから」
「……うん」
「あっ!なんだ、もうナイアガラのやつ終わってんじゃん!いつの間に?」
九条くんは何事もなかったかのように、また花火に目を戻す。
私も九条くんの視線を辿るように花火を眺めるけれど、胸のドキドキはちっとも収まらなかった。