きみだけに、この歌を歌うよ



だって愁の後ろは私の大好きな場所だもん。



私の大好きな場所に、杏里ちゃんが乗るんだ…。

愁の紺色のブレザーの裾を、後ろから杏里ちゃんがぎゅっと掴むんだろうな。

そんな姿を想像するたびに、ちくりと胸が痛くなる。



だけど、それが嫌だなんて言えなかった。



愁も『降りろよ!』って、嫌がるそぶりをしていたし。

だけど口元は笑ってて、なんだかんだいいながら楽しそうだったから。

杏里ちゃんとは幼なじみだし、まぁ仕方ないかって我慢していた。



そのときはまさか、愁が私を捨てて杏里ちゃんを選ぶとは思ってなかったんだよなぁ…。



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