オオカミ彼氏
すると、ドアのすぐ側に、小さなオオカミが立っていた。
イノシシの姿はもう無い。
私は小さなオオカミの方へ駆け寄った。
それが桜庭くんだって、直感したからーーー
「…桜庭くんっ」
私の声に反応してオオカミが振り返る。
口元からは血が垂れていた。
「…!怪我したの!?大丈夫!?」
私はポケットからハンカチを取り出して、オオカミの口元へと手を伸ばした。
しかしその手はオオカミの前足によって払われる。
「…え?」
暫く沈黙が続いた後ーーー
スゥゥ…
目の前のオオカミがシュウっと消えた。
そして、人間の姿をした桜庭くんが現れた。
…目の前で姿変えられると本当に……
少し背筋がゾッとした。