神様修行はじめます! 其の五のその後
 あたしはこちらの世界で門川君と出会った。


 厳密に言えば出会いは現世の高校だったけど、心を通わせ合うことが叶ったのは、こちらの世界で一緒に命懸けで戦ったからだ。


 絹糸や、しま子や、たくさんのかけがえのない仲間たちとも出会った。


 戦いを通して、いろんなことを学んだ。


 現世にいたら得られなかった大切な物が、ここにはいっぱいあったよ。


「だから人生って、なにが不幸に繋がっていて、どの出来事が幸運に繋がるかなんて簡単にはわからないんだよ」


「現世での生活を失っても、君はそう言い切るのか?」


「失ってないもん。大切な物はあたしの中にちゃんと存在してるし、両親や真美とは一時的に会えないだけだし」


 いつか、現世に里帰りできる日がくるかもしれないじゃん。


 その『かもしれない』は、明日自分の頭の上に飛行機が落っこちてくる『かもしれない』と同じ確率だ。


 でもあたしは飛行機が落ちてくる確率よりも、現世に帰れる確率の方がだんぜん高いと思ってる。


 だって子猫ちゃんっていう希望の架け橋が存在してるんだもん。


 つまり、フィフティ・フィフティなんだよ。


 どの道を選べば自分が不幸になるのか、それとも幸福になるかなんて確率は。


 だから自分で決断するしかないんだし、門川君があたしの決断に対していつまでも責任を感じることはないんだよ。


 「こっちの世界にいることを望んだのはあたし自身だし、あたしは幸せだし、いつかまた現世に里帰りできる希望も充分あるんだし。なんの問題もないんだから」
< 109 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop