神様修行はじめます! 其の五のその後
 あたしの胸の奥から、言葉にならない感情が泉のように溢れてくる。


 ありがとう門川君。きっとあなたと出会えたことは、あたしの人生最大で最高の喜びだ。


「あたしもずっと感謝を捧げ続けるよ。天に、地に、出会った瞬間に、なにより誰より門川君自身に」


 見つめ合うあたしたちの姿を優しく見守る絹糸が、小さな声でつぶやいた。


「我も小娘には感謝しておるよ。……ナオと永世にもな」


 その言葉が心の奥にジンと響いた。


 じー様と永世おばあ様の笑顔が脳裏によみがえって、懐かしさと切なさが込み上げて胸が熱くなる。


 ずっとずっと遥か昔から、いろんな人たちがいろんな場所で、精いっぱい生きてきた。


 きっと様々な出来事があって、それは嬉しいことばかりじゃなくて、悲しいことも山ほどあったろう。


 みんな自分の無力を嘆いて歯ぎしりして、いっぱいいっぱい泣いただろう。


 それでもみんな、苦しい現実の中でもなにが自分にできるのか、どこかに道はないかを探して、生き続けた。


 その結果として、あたしたちっていう命が受け継がれている。


 命って、『どんなにつらくても苦しくても、人はちゃんと自分が生きる場所を見つけられる』っていう、確かな証明なんだ。


 これからまたいろんなことが起きるだろうけど、自分がやれることに真正面から向き合って、できることをできるだけやって、生きていけばいい。


 壁にぶち当たっても大丈夫。道はどこかに必ず存在するから。


 回り道でも、右回りでも左回りでも、斜め横でも斜め後ろでも。


 なんなら真後ろに戻ったっていい。その先で、これまで見つけられなかったものに気がつくかもしれないし。


 後ろに戻った分、助走をつけて壁を飛び越えられるかもしれないもの。


 生きる形も、道も、いろいろある。生きるということを諦めさえしなければ。
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