君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 翌朝は、すっきりと頭もクリアになり、由真は自分の回復力の高さがありがたくもあったが、いつも通り通勤の準備をして、走りだした。

 時間を確認し、いつも藍が通る時間を見計らって公園で待つ。

 由真は、もう一度藍に会いたいと思っていた。

 会って、話をしたいと思っていた。

 しかし、その反面、会って確かめる事が怖くもあった。

 藍の、怜悧な視線を思い出す。
 冷たく、指すような視線。

 けれど、

「好ましいと思います」

 由真を、そう評した時の藍の言葉に、一瞬感情のようなものが含まれていたのは自分の錯覚だったのだろうか。

 由真は、藍にどうしようもなく惹かれ始めている自分が恐ろしかった。

 無関係であって欲しいと。

 感情表現が少し下手なだけの、唯の人であって欲しいと、強く願った。
 けれど、自分が興味を持ったあの男は、並の人間では無いとも感じていた。

「……私、実はMなのかな……」

 ぽつり、と、ひとりごちる。

「いやいやいや、違う、断じて違う」
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