君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 ああ、これは、ダメだ。由真は思った。
 由真の言葉で、鉄面皮を崩す藍に、どうしようもなく惹かれているのだと由真は思った。

 もっと色々な顔を見たい。心から笑った顔を見たいと、思ってしまった。

「……私、あなたに言っていない事があるんです、それでも、いいですか?」

 由真は、藍への疑問を胸に抱えながらも、自分の感情を抑える事ができなくなっていた。

「……私も、あなたに全てを語ってはいません、しかし、それも含めて、互いをもっと知り合う為に、時間をとっていただく事は可能でしょうか……その、つまり」

 藍が、目の端をわずかに赤く染めながら、言った。

「お付き合い、して、いただけないでしょうか」

 由真は、内心で、仲間たちに詫びながら、答えた。

「……はい、よろしく、お願いします」

 二人は、互いの連絡先を交換して、それぞれの職場に向かう為に別れた。

 由真は、靴に羽が生えているような気持ちで、駆けるようにKIST本部へ走っていった。
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