君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 食後のコーヒーが提供されて、食事の時間はもうじき終わる。

 その先について、由真はあまり考えていなかったが、一回目のデートであるわけで、次はあるのか、とか、この後どうすべきか、と、ぐるぐる思いを巡らせていると、ポケットに入れておいたスマホが振動した。

「ちょっと、失礼します」

 ひとこと言って由真は化粧室へ行き、スマホを確認した。
 それは、今夜の当直である青竹征治からの連絡だった。

 ……勤務時間外だけれど、魔獣出現についてはその限りでは無い。

 由真は、ほっとしたような、残念なような気持ちで、席に戻った。

「代ヶ根さん、すみません、ちょっと急なトラブルで職場に戻らなくてはならなくなりました、申し訳ないんですが、今日はここで……」

 由真は、そう言いながら化粧室で用意していた自分の分相当の紙幣を藍に渡そうとした。

「今日は私が誘いましたし、もたせてください、……では、次は黛さんもちという事で」

 『次は』と、言ってもらえた事で由真は少しほっとしながら、繰り返し感謝の言葉を述べて足早に店を後にした。
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