君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
「来ないで!」

 緩嫁がはっきりと言い放った。

「バカな、今まで自分が何をしていたかわかっていないのか?」

 礼門が言った。

 魔獣化した間の記憶は、『人としての意識』が残っていれば、残っている。

 完全に魔獣と一体化すると、核となっていた人間の意識は無くなり、魔獣そのものになる。そうなるともはや浄化は不可能で、魔獣本体を消滅させる他ないのだが、一度戻れたという事は、緩嫁はまだ完全体では無いという事だ。

「私はこの人と行くの、この人達の役に立ちたいの、自分で決めたの!」

 緩嫁本人にはっきりと拒絶されてしまうと、礼門達にはもうどうする事もできない。

「ですが……」

 礼門の言葉を再び緩嫁が遮った。

「もういいってば! こんな妙ちきりんなヒーローもどきの人たちに用は無いんです、行きましょう、代ヶ根さん」

 緩嫁の言葉を、由真は聞き逃さなかった。

 青い甲冑の男は、しかし何事もなかったかのように緩嫁をともない、堂々とその場を後にした。

「代ヶ根……って、言ったよね、今の人」

 既に緩嫁を確保する事はあきらめているように、微動だにせず礼門が言った。

「って事は、カオス・ウェディング・パーティと今回の件は無関係では無いって事だね」

 蘇芳が言うと、皆声には出さず、心得たようにうなずいた。
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