君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 礼門に借りたバイクを走らせながら、由真はある場所へ向かっていた。
 先方に指定された場所。
 津久根山神社。

 そこが、由真が藍に連絡し、会うために指定された場所だった。

 双方一人で来る事。それだけが条件だ。

 礼門はじめ、皆が危険であり、やめるべきだと説得されたが、津久根山は最も玄武の力の強い場所。不利なのは藍の方だった。もちろんそれも見越した上での場所指定なのだろう。

『……私です、今夜あった事で、お話があります』

 由真は、メールやラインでは無く、直接藍へ電話をかけた。
 藍は、多くは語らなかったが、わかりました、と、答え、すぐに時間と場所を調整した。

 由真は、バイクを走らせながら、自分はどうしたくて藍に直接連絡をとったのか、自分の中で考えを整理していた。

 声と、背格好、そして、緩嫁の言葉。
 由真の予想は、確定した。
 あの、青い甲冑の男は、代ヶ根藍その人でほぼ間違いないのだろう。

 ……そして、藍の方も、由真がSaBAPの一員である事に恐らく気づいている。

 由真は、代ヶ根達の、カオス・ウェディング・パーティの目的を確かめたかった。
 藍達のやり方は、単に魔獣を増やし、意のままに操るといった事では無いように思えたからだ。

 で、あるならば、目的いかんによっては、互いに協調する事も可能なのではないか、と。

 それは、由真自身の願いであったかもしれない。
 藍との対立を、由真は避けたいと思っていた。
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