君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
「でも、あなたは違ったんです、黛さん」

 藍は、由真から視線をはずし、自分の心臓を押さえるようにした。いや増す鼓動を押さえるように。自分の感情をこれ以上漏らさないようにしているようにも見えた。

「よく考えれば、聖獣の加護を受けるあなたなら、私の力の影響を受けないわけです、でも、私と対立する存在であってほしくないと、思ってしまった、確かめる事が怖かった」

「私は、私自身が軽蔑していた女性達と同じです、己の事は何一つ明かさず、あなたが、私をまるごと受け入れる存在になってくれるのではないか、受け入れて欲しいと、思ってしまった」

「私を、軽蔑しますか? 黛さん」

 藍の瞳に涙は浮いていない、しかし、押し殺した声は、泣いている人のようだった。

「代ヶ根さん、私も、自分の全ては語っていなかったじゃないですか、私だってそうです、私、あなたに惹かれています、今もです、あなたの全てを受け入れられるか、私はまだわからない、でも、話してくれませんか、私も話ます、だから」

 由真は、しがみつくようにして藍を抱きしめた。

「黛……さん」

 藍は、驚きつつも由真を抱きしめ返した。

「私は、感情を出してもいいんでしょうか」

「見せて下さい、私にあなたが救えるかどうかはわかりません、でも、私、あなたを知りたい、あなたに惹かれている自分自身を抑えきれないんです」

 由真が見上げると、すぐそこに藍の顔があった。
 由真は、今、藍にかけるべき言葉が浮かばず、ただ受け入れようと目をとじた。
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