君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 藍は、黙って目をとじた由真を愛おしいと思った。
 そして、言葉を紡ぐ替りに自身の唇で由真の唇を塞いだ。

 互いを知りたい、そう、思いながら、二人はその手段に言葉ではなく行動を選んだ。

 由真の手が、藍の背を掴み、藍の手は、由真の腰を引き寄せた。

 欲望だろうか、衝動だろうか。

 どこかで自分の感情をきちんと分析して、落とし所を探さなくてはと考えながら、二人共に、身体の制御ができなくなっていた。

 二人の身体が、互いを求めていた。
 溢れ出る感情を受け止める為に、言葉ではなく、行動で示すために。

 二人は、自分にそんな熱情があった事に驚きながらも、不器用そうに唇を重ね、感触を確かめていた。

 その、柔らかさを。
 その、固さを。

 触れるだけでは足りない。
 もっと、奥へ、深くへ。

 それは、どちらの感情だったのか。
 重なった部分は、繋がりを求めて蠢き、引き寄せ、もつれるように絡み合い始めた。

「ンッ……」

 酸素を求めて唇を離し、息を吸ってまさ重ねる。

 由真は、自分の内部が蕩け、溢れだしそうになっている事に驚いていた。
 藍は、自分が固く張り詰め、はち切れそうになっている事に驚いていた。

 藍の、探るような指先が、由真の内ももに触れそうになった時に、由真に残った最後の理性と倫理観が働いた。
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