君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 魔獣は浄化されず、消滅させられる。

 他に手段が無いとはいえ、元は人間だ。

 超法規的に刑法の対象にならなかったとしても、仲間たちに、そのような形で対応させる事は避けたい。

「ごめんなさい、私は……」

 すまなさそうに由真が言うと、藍は答えた。

「いえ、すみません、どうも、感情の制御ができなくなっているようです、さっきのは、私の素直な気持ちですが、あなたの意志を軽んじるつもりではありません」

「むしろ、私の理性では、あなたの意志を尊重したいと思っています、職務を全うする強い意志をもつあなたを、好ましいとさえ」

 この逢瀬を、つかの間のものにしたくない。由真は思うのだが、その為には、どちらかが自分の仲間を裏切らなくてはならない。

「何故、あなたたちは、魔獣を積極的に生み出しているんですか」

 由真が顔をあげて、まっすぐに藍を見た。

 藍は、わずかに逡巡した様子を見せて、しかし、きっぱりと言った。

「『魔獣』を生み出そうとしているのではないのです、魔獣となる因子をより強く持つ人たちを選別し、排除しようとしているんです」

「『魔獣を生むため』ではなくて、魔獣になりやすい人間をあらかじめ排除する事が目的なんですか?」

「たとえば、緩嫁フミエさん、彼女は『結婚』に対して、過度な要望を持っていた、魂の伴侶を求めるのでは無く、高いステイタス、収入、無条件に自分を愛する存在、かつ、他者に見せて誇れる相手を求めていた」
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