君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
対峙する二人
 その夜、魔獣は現れなかった。

 津久根市内のマンションに帰宅した由真は、夜が明けるまでベッドでまんじりとしていた。

 一気に距離が縮まり、そして前以上に距離のできた夜だった。

 藍に触れた時の熱や体温を思い出して、恥ずかしいような、いやらしいような気持ちになりながら、自分のとった行動に赤面して、由真はベッドで足をばたつかせた。

 夜の神社で、人気がなかったとはいえ、パブリックな場所であんな事を。

 もっと言ってしまえば神域であんな事を、と、由真は、羞恥心で顔を赤に染めた。

『このまま、あなたをさらっていければいいのに……』

 耳に残る藍の声を反芻しながら、由真はクッションに抱きついた。

 魔獣を生み出さないように、産まれた魔獣を浄化する為の組織がSaBAPならば、カオス・ウェディング・パーティはその反対。

 敢えて魔獣化させる事で、魔獣を隔離し、排除しようとしている。

 魔獣化してから、時間の経過と共に、浄化は難しくなる。

 藍達は、時間を稼いでいるように見える。
 これ以上、時間が経過すれば、緩嫁フミエはもう戻れない。
 完全に魔獣化したのであれば、その先にあるのは消滅だ。

 もう一度表れた時、それが、最後のチャンスかもしれない。
 由真はちからいっぱいクッションを抱きしめた。
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