君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 翌朝、いつものように、由真はKISTへ通勤の為に走りだした。
 公園を通りかかり、いつもの休憩ポイントで少し待ってみたが、藍は姿を表さなかった。

 由真は、深くため息をついて、リュックを背負いなおし、走り始めた。

 聖獣の力を振るうのは、適性が必要だ。由真は、自分がそれにふさわしい人間でありたいといつも思っていた。
 SaBAPのメンバーは頼もしい仲間であり、主にコスチュームについては大いに文句のあるところではあるが、共に戦ってきた戦友でもある。

 藍とは、出会ってまだ数日だ。強く惹かれている事も自覚しているし、できれば共にありたかった。しかし、忘れなくてはいけないのだ。

 次に、藍が由真の前に現れて、仲間を害するような事があったら。
 その時、自分はどうするだろう。
 由真は、走りながら、そんな日が来ない事を祈った。
 届かない祈りだという事は、わかっていても、願わずにはいられなかった。
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