君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
現場に到着すると、既に礼門と征治によって結界が敷かれ、一般人への被害は出ていないようだった。
津久根山神社山門をくぐり、由真の脳裏を一瞬昨夜の情景がよぎったが、走り抜けるように現場へ到着する。
「礼門!」
素子の叫ぶ声が聞こえた。
黄色のスーツがやぶれ、血に染まっている。
かつて緩嫁フミエだった魔獣は、前回よりもさらに肥大化し、下肢も大蛇に変わっていた。大蛇の下肢、上半身は裸体の女性、小さな蛇に変質した髪は長く伸び、一体一体がうねり、蠢き、不快な音をあげていた。
両手の爪は長く伸び、そこには礼門のものだろう、血がついていた。
由真は、礼門の事はそれほど好きでは無いが、しかし、こんな風に傷つけられては黙っていられない。
「聖獣顕現っ!」
由真がウェラブルデバイスを頭上にかかげ、玄武の力を具現化する。
黒いスーツで自分を鎧うと、由真は自身の武器である弓を出現させ、魔獣に向かって矢をつがえた。
怒りの為か、いつもよりも集中できている実感が由真にはあった。
引き絞った弓から、一閃する矢の軌跡が伸び、勢いよく魔獣の額に矢が刺さった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
魔獣が叫び、咆哮が天を裂いた。
由真は、視線の隅で素子と征治に支えられながら、立ち上がる礼門を見た。
もう一撃、と、由真が矢を番えた時。
「ブラック! ダメだ!」
蘇芳の声が、どこか遠くで響く。
由真は、一瞬何が起きたのかわからなかった。
魔獣の頭髪にも似た蛇が伸び、由真の足に巻き付いて、そのまま空へまき上げられた。
由真は、平衡感覚が狂い、自分がどこにいるのかわからなかった。
地面が、すぐ側にあり、叩きつけられる! そう、思った刹那。
由真は、誰かの腕によって抱きかかえられていた。
蘇芳か、征治だろうか、そう思って、顔をあげると、そこにいたのは、全身を青い甲冑で鎧った藍だった。
「しろがね……さん?」
「無茶をして……」
そう言った声は、確かに藍のものだった。
津久根山神社山門をくぐり、由真の脳裏を一瞬昨夜の情景がよぎったが、走り抜けるように現場へ到着する。
「礼門!」
素子の叫ぶ声が聞こえた。
黄色のスーツがやぶれ、血に染まっている。
かつて緩嫁フミエだった魔獣は、前回よりもさらに肥大化し、下肢も大蛇に変わっていた。大蛇の下肢、上半身は裸体の女性、小さな蛇に変質した髪は長く伸び、一体一体がうねり、蠢き、不快な音をあげていた。
両手の爪は長く伸び、そこには礼門のものだろう、血がついていた。
由真は、礼門の事はそれほど好きでは無いが、しかし、こんな風に傷つけられては黙っていられない。
「聖獣顕現っ!」
由真がウェラブルデバイスを頭上にかかげ、玄武の力を具現化する。
黒いスーツで自分を鎧うと、由真は自身の武器である弓を出現させ、魔獣に向かって矢をつがえた。
怒りの為か、いつもよりも集中できている実感が由真にはあった。
引き絞った弓から、一閃する矢の軌跡が伸び、勢いよく魔獣の額に矢が刺さった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
魔獣が叫び、咆哮が天を裂いた。
由真は、視線の隅で素子と征治に支えられながら、立ち上がる礼門を見た。
もう一撃、と、由真が矢を番えた時。
「ブラック! ダメだ!」
蘇芳の声が、どこか遠くで響く。
由真は、一瞬何が起きたのかわからなかった。
魔獣の頭髪にも似た蛇が伸び、由真の足に巻き付いて、そのまま空へまき上げられた。
由真は、平衡感覚が狂い、自分がどこにいるのかわからなかった。
地面が、すぐ側にあり、叩きつけられる! そう、思った刹那。
由真は、誰かの腕によって抱きかかえられていた。
蘇芳か、征治だろうか、そう思って、顔をあげると、そこにいたのは、全身を青い甲冑で鎧った藍だった。
「しろがね……さん?」
「無茶をして……」
そう言った声は、確かに藍のものだった。