君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
婚活パーティへ潜入せよ!
「いーやーでーすー!!」

 由真が言った。

「君が適任なんだ」

 司令官然と、顔の前で手を組んで、椅子に座ったまま、神妙な顔つきで礼門が言った。

 被害者女性が加入していた婚活サイトに、おとりで参加し、内情を調べてはどうか、という結論に至った。
 被害者が皆女性である事から、おとりも女性がよいだろうという事で、白羽の矢がたったのが由真だった。
 由真にもわかっている。当然ルナは対象外だし、素子か由真の二択になるのだから。

「素子さんは、ダメです!」

 隣の席に座っている素子を抱きしめるようにして征治が言った。

 征治と素子は一緒に住んでいる。正確に言うと素子と礼門姉弟が住んでいるマンションに征治も同居しているというのが正しいが、二人が付き合っているのは周知の事だ。

「征治さん、これ、仕事ですから」

 申し訳なささそうに素子が言い、征治を引き剥がしながら続けた。

「私、やります、これ以上被害者を出すわけにはいきませんし」

 素子自身は、仕事と割り切っているようだ。

「うー、素子さんはそう言うけどさあ、……なら、私がやります、やればいいんでしょ」

 由真は最初から行くなら自分だろうとは思っていた。当然のように言う礼門に少し腹が立って自分から言い出すのをしぶっていただけだ。
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