君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
 藍は、抱きかかえていた由真を降ろしながら言った。

「立てますか?」

 そう言いながら、兜をはずし、顔を見せた。
 そこに居たのは、まぎれもなく藍だった。

「今ですよ、黛さん」

 藍の言葉で、由真は仲間たちを見た。

「イエロー、行ける?」

「ああ……なんとかね」

 征治と素子に支えられながら、礼門はかろうじて立っていたが、苦痛に顔を歪ませながら、一人で立てる様子を見せた。

 魔獣は、由真の矢によって貫かれた矢をとろうとしてもがいている。
 浄化の為の、それは好機だった。

「じゃあ、皆、行くよっ!」

 礼門の合図で、全員が魔獣を取り囲むように散った。
 五人で中心部にいる魔獣に対し、武器を向ける。
 五色の閃光が魔獣の身を焼くと、魔獣の姿は崩れ落ち、うずくまるようにして倒れている緩嫁フミエが姿を現した。

 ほっとした由真が、藍の方を見ると、藍は倒れたまま動かない。

「しろがねさん?!」

 駆け寄ると、藍が口から血を流して倒れていた。
 先ほどの地面に叩きつけられるような衝撃から、由真を身を挺してかばった藍は、出血するほどのダメージを負っていたのだ。

「嘘、やだ、ダメ、そんな!」

 駆け寄って、由真が抱き起こす。

「目を、開けて、しろがねさんっ!」

 一瞬、瞳をあけた藍は、由真の無事を確かめて、安心したように、再びまぶたを閉じた。

「いやあああああっ!」

 由真の、悲痛な叫びが、結界の内に響いた。
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