桜の花の散る頃に
昔の事を思い出して、また寂しい気持ちになる。

そんな日々を繰り返して数週間……

ある日、俺はふと、公園に行こうという気になった。

何故だろう、今までは見向きもしなかった公園に、俺は惹き付けられるように出向いたのだ。

公園にはもう、すっかり散ってしまった桜の花びらが地面にポツリポツリと落ちていた。

少し寂しい桜の木が溢れる公園を、俺は一人意味もなく歩いた。

久々に触れた外の空気は、すっかり暖かくなっていた。









木を眺めながら歩き続けて、数分。

俺は、ある一つの大木に惹き付けられた。

その木の周りだけは、ずっと前に散ったはずの花びらが沢山、残っていたのだ。

俺はそっと、その木に近づいた。

そして、その大木の周りをゆっくりと歩いた。

そこで、俺は見つけてしまったんだ。

沢山の花びらに包まれ、安らかな顔をして眠る一匹の狐……

俺は、狐に近づき、そして、そっとその狐を抱き上げた。

「おやすみ…」

サァっと温かい風が吹き、地面に落ちた桜の花びらがヒラヒラと舞い上がった。

その中の一つ、綺麗なピンク色をした花びら俺の髪の毛に絡まった。
< 3 / 4 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop