婚活女子とイケメン男子の化学反応
「あの……村瀬さん」
「はい」
「やっぱり、相手の条件を変えたいです」
とうとう根を上げた私。
でも、これが本番じゃなくてよかった。
危うく大惨事になるところだった。
「じゃあ、どういう人がいいの?」
「そうですね。村瀬さんみたいな人がいいです」
思わずそう答えていた。
村瀬さんみたいな人とだったら、ドキドキはするけれど不思議と話せる気がしたから。
「それって……告白?」
村瀬さんがクスリと笑う。
「え? ちっ、違います!! 村瀬さんくらいお喋りな人っていう意味ですから!」
ムキになる私を見て、村瀬さんは「はいはい」と言いながら面白そうに笑っていた。
その後の村瀬さんは、特に芝居をする訳でもなく。
迎えに来た時の村瀬さんに戻っていた。
「仙道さん。海見えてきたよ」
しばらくして、村瀬さんが言った。
「うわ~ホントだ。綺麗ですね」
青空の下に広がる海は、太陽が反射してキラキラと光っていた。
海なんて何年ぶりだろうか。
「あっ、ちょっとここ寄っていこうか」
「はい」
村瀬さんが駐車場に車を止めた。
ちょうどそこは『国立公園』になっているらしく、椰子の木なんかもあり、何だかとてもリゾートチックなところだった。
「上に展望台があるから登ってみる?」
村瀬さんが果てしなく続く階段を指さした。
「え……登れるかな、私」
ヒールのある靴じゃないけれど、最近運動不足だからな。
不安げに見上げると、村瀬さんがイタズラっぽく笑った。
「そうだよね。仙道さん、もう年だもんね」
「え、年って…。失礼ですね! 村瀬さんの4歳年上なだけです」
私はプクッとむくれながら階段を登り始めた。
「冗談だよ。俺、仙道さんを年上だなんて一度も思ったことないから安心して」
村瀬さんはからかうように笑ってくる。
「それって、私の精神年齢が低いっていう意味ですか?」
「あ、ちゃんと伝わったんだ?」
「も~村瀬さんって、意外とイジワルなんですね」
「正直なだけだよ」
なんて言い合っているうちに、いつの間にか展望台へと着いていた。
「うわ~すごい。見晴らしいいですね。登った甲斐がありました」
風も気持ちいいし。
何だか凄く楽しい。
笑顔で振り返えると、村瀬さんが私を見つめていた。
「えっと……何ですか?」
照れながら尋ねると、スッと私の頰に手が伸びてきた。
「怖くなくなったんだね……俺の視線」
「あっ…そうですね。村瀬さんの視線なら、もう怖くはないです」
凄くドキドキはするけれど。
「俺にこうして触られても平気なんだ?」
村瀬さんは、いつものように私の顔を両手で挟み自分の方へと向ける。
「これは…さすがに何度もされているので慣れました」
「そっか」
村瀬さんは笑いながら私をゆっくりと放した。