婚活女子とイケメン男子の化学反応

「へえ~。既婚者がずいぶん大胆なことしますね。僕の女に手を出さないで下さいよ」

階段を上がってきた河野さんがそう言って、私の腕を強引に摑んできた。

その瞬間、村瀬さんは河野さんの手を捻り上げて、私を河野さんから引き離した。

「僕の女? 冗談はやめて下さいよ、河野さん。元会員さんでも手加減しませんよ?」

村瀬さんは鋭い目つきで河野さんを睨み返す。

「あんたさ、自分の立場分かってるのか? 俺はあんたの不倫現場の証拠画像を持ってるんだぞ? 彼女から手を引かないなら、全部バラして会社にいられなくしてやるよ!あんたの嫁にもな」

「どうぞお好きにして下さい。別にこちらは痛くも痒くもありませんから」

村瀬さんの言葉に、河野さんの表情はみるみると険しくなっていく。

「は? 開き直りやがって! 分かった。今からあんたの社長のところに行って、あんたのしたことを全部ぶちまけてやるからな。いいんだな?」

「どうぞご自由に」

「村瀬さん! ダメですって!」

河野さんをこれ以上挑発したらマズい。
私は村瀬さんの腕を摑んでブルブルと首を振った。

すると、村瀬さんは、大丈夫だよという風に私に軽く微笑んでからこう言った。

「河野さん。何か勘違いされてるようですけど、私は既婚者じゃありませんよ。この指輪はただの女よけです。私が誰を口説こうと、あなたにとやかく言われる筋合いありませんから。それから、あの会社の社長は私です。これ以上、彼女に付きまっとって言いがかりをつけるのであれば、会社としてこちらも法的手段に訴えます。脅迫罪、名誉毀損、ストーカー行為、営業妨害、あなたこそ、自分の立場をわきまえた方がいいんじゃないですか?」

河野さんはようやく観念したのか、悔しそうに顔を歪めながら、私達の前から去って行った。

「あの……村瀬さん。今のって本当ですか?」

河野さんのことなんて、もうどうでもよかった。

村瀬さんが既婚者じゃない!?
今はその言葉の真相を確かめるほうが重要だったから。

「ちゃんと話すから、部屋に入れてくれる?」

私は村瀬さんの言葉に頷いて、玄関のドアを開けたのだった。




< 27 / 105 >

この作品をシェア

pagetop