婚活女子とイケメン男子の化学反応
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「どうして、そんなこと言っちゃったんですか! せっかく既婚者じゃなかったのに」

次の日の昼休み、倉本さんに昨日の河野さんの一件と村瀬さんのことを打ち明けたら、盛大にため息をつかれてしまった。

「いや…だって。向こうは社長さんだし、私のことなんて会員としてしか見てないだろうし…これ以上勘違いしちゃいけないと思って」

情けない私の発言に、倉本さんは更に深くため息をつく。

「まあ、仙道さんがそれでいいなら私がとやかく言うことじゃありませんけど。そんな不完全燃焼の想いを抱えたままで、婚活なんて出来るんですか?」

「それは……」

「よく考えた方がいいと思いますよ」

「そう…なんだけど」

倉本さんの言葉にぐうの音もでない。
まさにその通りだったから。

こんな気持ちを抱えたまま、村瀬さんに紹介された男性と結婚前提の恋をする自信なんてない。

この先どうすればいいんだろう、私。
ショボンと肩を落としていると、倉本さんの隣の席に青山主任がやって来た。

「おいおい、あんまり仙道さんをいじめるなよ、倉本」

「別にいじめてなんていませんよ。後輩としてアドバイスしてるだけです」

「おまえな。後輩としてアドバイスっておかしいだろ? 後輩なら後輩らしく、もっと可愛くしてろよ」

「青山主任以外には可愛くしてるつもりですけど」

「何で俺には可愛くしないんだよ」

いつものようにじゃれ合う二人。
そんな二人を眺めていたら、思わずポロリと本音が漏れた。

「いいな……私も二人みたいに両想いになりたかったな」

「「え!」」

驚いた顔で二人が私を見た。

「な、何言い出すんですか…仙道さん」

「そ、そうだよ。仙道さん、突然やめてくれよ」

二人はまっ赤になりながら、そのまま俯いてしまった。

気まずい沈黙が続く。
マズい。
どうやら余計なことを言ってしまったらしい。

「あ、私、そろそろ戻ります…ね。し、失礼しました」

私は慌てて席を立ち、逃げるように食堂を出た。

やってしまった。
でも、本当に両想いだから大丈夫だよね?

振り返ると、二人は照れながらも楽しそうに会話を始めていた。

良かった。
ホッと肩をなで下ろし、廊下を歩き出すと、ポケットの中のスマホが鳴った。

誰だろう?

画面を見てドキッとする。
村瀬さんだったから。

『もしもし』

『すいません、村瀬です。今、休憩時間ですよね? 少し話せますか?』

明日の面談の打ち合わせだろうけれど、事務的な口調にちょっと傷ついてしまう。

『はい。大丈夫ですけど…』

すると、村瀬さんから予期せぬ言葉か飛び出した。

『実は仙道さんにお見合いの申し込みがありました』

『え……お見合い?』

『はい。先方は仙道さんの条件に合った方です。明日の夜7時、サクラージュホテルの最上階にあるクレージュというレストランに来て下さい』

村瀬さんの言葉に動揺する。

どうしよう。
お見合いだなんて…。

でも、私には断る理由なんてない。
自分で村瀬さんにお願いしたのだから。

『わ、分かりました』

仕方なく返事をして電話を切った。





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