婚活女子とイケメン男子の化学反応
“勘違いしてんじゃねえよ、ブス!”
“おまえが笑うとキモイんだよ!”
“目障りだから学校来んな!”
私は中学生の頃、クラスの女子から嫌われていた。
理由はよく分からなかったけれど、教科書を破かれたり、机に落書きされたり、ジャージや上履きを捨てられたりと……辛い日々が続いた。
ある日、私は両親に相談した。
自分の何がいけないのかを知って直したかったから。
けれども、
“そうね。皆あんたを見てるとイライラするんじゃない?私もそうだから。早くこの家から出て行って欲しいわ”
継母から、そんな言葉を投げつけられた。
実父は何も言わずに、そのまま仕事に行ってしまった。
連れ子同士の再婚。
薄々自分が歓迎されていないことには気づいていたけれど、それ以来、継母とは口をきかなくなった。
“鈴乃。もっと前髪を伸ばして顔を隠したらどうかな。眼鏡をかけて、もっと地味な髪型にして……とにかく存在を消すんだよ”
無関心な親の代わりに、親身になって相談に乗ってくれたのは、二つ年上の義兄だった。
不思議と言うとおりにしたら、イジメはピタッと治まった。何とかそれで中学時代は乗り切り、高校や大学でも人目を避けながらの生活を続けたのだ。
こうしてお兄ちゃんのおかげで、平穏な日々を取り戻すことができた私だったけど、引き替えにどんどん自分に自信を無くし、やがて人の視線も怖いと感じるようになっていった。
友達もできず、どこに行くにもお兄ちゃんと一緒。
それでも、街で幸せそうなカップルを見かけると、羨ましく思ったりもして。
“いつか私も恋をしてみたいな”
大学生の頃、お兄ちゃんの前で思わずこぼしてしまったことがあった。
すると、お兄ちゃんは怒って私にこう言った。
“鈴乃は恋愛には向かないよ。性格も暗いし……体だって、この前お風呂上がりにチラッと見えたけど全然大したことないじゃないか。男にすぐに捨てられて、心に深い傷を負うだけだよ”
すごくショックだったけれど、お兄ちゃんの言葉はいつも正しかったから、私は恋をすることを諦めたのだ。
その後、就職と同時に家を出て、今のアパートに移り住んだ。
人との付き合いも絶ったまま、この歳になるまで仕事一筋でやって来たのだけれど、やっぱり結婚への夢だけは捨てきれず、意を決して結婚相談所にかけ込んだのだった。
そして、今。
ようやくその夢が叶おうとしている。
だから、お兄ちゃんに何を言われたって、零士さんのことだけは手放す訳にはいかないのだ。
ベッドの中で大きく深呼吸しながら、私はお兄ちゃんの言葉を必死に心から追い出していた。