婚活女子とイケメン男子の化学反応

その日は一日中、村瀬さんの言葉が頭から離れなかった。

あれって、呆れられたんだよね。
無理もない。
顔を背けながらお礼を言うなんて非常識だったし。
恩を仇で返してしまったようなものだ。

“あんたの場合、相手探す前にそこからだな”

村瀬さんの言葉が鋭く胸に突き刺さる。

結婚相談所なんて、私にはまだ早かった。
きっとこのままじゃ、相手の男性にも迷惑をかけてしまう。村瀬さんにだって……。

やっぱり退会しよう!
私はガタッと席を立った。


「お先に失礼します」

いつものように小さく呟いて、私は結婚相談所へと足を向けたのだった。


…………


「退会ですか? あの……村瀬に何かご不満な点でもありましたでしょうか?」

受付の女性からは、想定外の言葉が返ってきた。
そっか、私が一日で退会すると、村瀬さんのせいになっちゃうのか。

どう説明したらいいのだろう。
全て私が悪いのに。

「あっ…いえ、あの。村瀬さんのせいではなくって…わっ、私が」

その時だった。

「仙道さん。今日はどうされたんですか?」

聞き覚えのある声に、体がビクッとなる。

恐る恐る振り返ると、村瀬さんが爽やかな笑みを浮かべながらこちらを見つめていた。
朝とはまるで別人のように。



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