婚活女子とイケメン男子の化学反応
しばらくして、リビングから麻里奈さんの声が聞こえてきた。
「零士、お風呂ありがとう。零士も入っちゃたら?」
「ああ。これ終わらせたらな」
私は胸をざわつかせながら、二人の会話に耳を澄ます。
「何? 仕事?」
「そう。再来月のイベントの企画。そろそろ練っておかないとさ」
「あ~そうよね。何がいいかしらね」
麻里奈さんは少し考え込んでから、「そうだ!」と声を張り上げた。
「無人島で『サバイバル婚活』っていうのはどうかしら?この間テレビで見たんだけどね、無人島レンタルってそんなに高くないんだって。一日10万以下の島もあるみたいよ。魚捕まえたり、火をおこしたりなんかして、非日常的な空間の中で婚活したら、面白いんじゃない?」
「ふーん。なるほどね」
「ね? いい案でしょ!!」
「いや……ボツだな」
「ちょっと、何でよ! 人がせっかく考えたのに~」
「おまえ、考えてみろよ? 素人がいきなり行って、モリとかで魚捕まえたりできると思うか? 男が頼りなく見えて、返ってペア率下がるだろ」
「そっか。それもそうね」
「普通のキャンプくらいがちょうどいいんだよ」
「なら、またキャンプでいいんじゃない? はい、決まり」
「おまえ、考えるの面倒くさくなったんだろ?」
零士さんがクスっと笑う。
「そんなことないわよ」
「もういいから、おまえは向こうで寝てろよ。そっち側半分は電気消していいから」
「え~いいじゃない。ここにいさせてよ」
麻里奈さんが甘えた声を出す。
「隣にいられたら気が散るだろ?」
「でも、まだ12時だし眠れないわよ。それに、ストーカーの事思い出しちゃって、誰かのそばにいないと怖いのよ。私だって一応か弱い乙女なんですから」
最後は冗談っぽく言いつつも、麻里奈さんが零士さんのそばを離れる気配はなかった。
やっぱり、零士さんのことが好きだからだよね? 胸がズキズキと痛む。
「麻里奈。ストーカーの件はごめんな。すごく責任感じてるよ。解決するまでは、ちゃんと俺が守るから」
「うん。ありがと……」
それから、二人は無言になった。
楽しそうに喋られるのも辛いけど、こうして沈黙になられるのはもっと嫌だ。
一体、二人は何をしているの?
見つめ合ったり、くっついたりなんてしてないよね?
怖くて、とても覗けなかった。