婚活女子とイケメン男子の化学反応

受付の女性が村瀬さんに切り出した。

「あの、実は仙道様は、本日で退会」

「あ~~違います。違います。もう大丈夫です。さっきのの件は無かったことでいいですから」

慌てて受付の女性にそう告げる。

だって無理だ。
本人を目の前にして言えっこない。

絶対朝の件だって思われてしまうのだから。

今日はこのまま帰ろうと、逃げるように背を向けたのだけど。

「仙道さん、ちょうど良かったです。少しお時間ありますか?」

村瀬さんに引き止められてしまった。

「えっ…。あ……はい」

何だか嫌な汗が出てきた。 
もしかして、説教部屋にでも連れて行かれるのではないだろうか。

“勝手に退会になんか来てんじゃねえよ”

そんなブラック村瀬さんの声が聞こえた気がして、思わず身震いする。

「ちょっと一緒に来て下さいね」

村瀬さんは私の腕を掴むと、そのまま外へと歩き出したのだった。


……


「あの…村瀬さん」

「はい」

「ここへは何をしに来たのでしょうか?」  

恐る恐る質問する。

村瀬さんに連れて来られたのは、結婚相談所からワンブロックほど離れた場所にあるお洒落な美容院の前だった。

「見ての通り、髪を切りに来ました」

村瀬さんの答えにポカンとする。

「えっと…村瀬さんのですか?」

「な訳ないでしょ。仙道さんのですよ」

「えっ!」

思わず顔を上げた私は、村瀬さんとバッチリ目が合ってしまった。







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