婚活女子とイケメン男子の化学反応
「仙道さん、本当に送って行かなくて平気? 仙道さんだって、ちょっと酔っ払ってるよね?」
運転席の窓から、青山主任が何度も訊いてくる。
「私なら本当に大丈夫ですから。それより倉本さんをどうか宜しくお願いします」
私はペコリと頭を下げて、駅への道を歩き出した。
大丈夫かな、倉本さん。
歩きながら、彼女のことを考える。
まさか、お酒の強い倉本さんが、あんなに酔い潰れてしまうなんて思いもしなかった。
まるで、私の代わりにヤケ酒をしてくれたかのような、そんな飲み方だった。
『仙道さん、今日は何も考えずに飲みましょう!!』
あの後、トイレから戻ってきた倉本さんは、そう言って私にもビールを注いできた。
『じゃあ、一杯だけ』
私がグラスに口をつけると、倉本さんはそれを見届けてから、一気にビールを飲み干した。
『今日で綺麗サッパリ忘れて、明日からは新しい恋をして下さいね!』
なんて言いながら、倉本さんはどんどんお酒のペースを上げていき。気づくと、テーブルの上にうつ伏していた。
慌てて青山主任に連絡を取り、お店まで迎えに来てもらったのだけど、倉本さんは青山主任に抱きかかえられながら私を見て言ったのだ。
『仙道さん……早く幸せに……らってくらさい……ね』
彼女の言葉はしっかりと私の胸に刻み込まれた。
そう。
もう、くよくよしてる場合じゃない。
ちゃんと前を見て生きていこう。
信号待ちをしながら、よしと顔を上げたその瞬間。
向かいの歩道に、見覚えのある顔を見つけてしまった。
げっ!
葵さんだ!!
まさかとは思ったけど、あの全身お洒落なイケメンは間違いなく葵さんだ。
私はクルッと背中を向けて、目の前のビルへと駆け込んだ。
零士さんの関係者になんて会いたくないと思った。
もう余計な情報を耳に入れたくなかったのだ。
とりあえず逃げきれたよね?
ホッとしながら息を整えていると、突然後ろから声をかけられた。
「いらっしゃいませ! あなたに最高のパートナーをお約束する『ベルマリッジ』へようこそ」
ビクッとしながら振り向くと、そこにはスーツを来た年配の女性がニコニコしながら立っていた。
えっ!!
グルリと店内を見回せば、壁には『結婚相談所』と大きく書かれたポスターの文字が!!
「ただ今、入会金の無料キャンペーンもおこなっております。さっ、どうぞこちらへ」
私の腕はしっかりと拘束され、断るタイミングを逃したまま奥の部屋へと案内されてしまった。