婚活女子とイケメン男子の化学反応
9~零士side~
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鈴乃の同僚に会うはずだったあの日、俺は葵を庇って車に跳ねられ、意識不明のまま病院へ搬送された。
何とか一命は取り留めたものの、頚椎と右足の大腿部を骨折し、全治5カ月の重傷を負った。
『頚椎を骨折している為、後遺症で車椅子になる可能性もあります』
医者からそう告げられたことで、俺は鈴乃の同僚に連絡を取ることを諦めた。
そんな先の見えない状態で、鈴乃の人生を背負うことなんて許されないと思ったからだ。
『零士、ごめん………俺のせいでこんな事になって、本当にすまない。謝って済むことじゃないけど、俺はどんな償いでもするつもりだから』
葵はそう言って、俺に土下座した。
『別にいいよ。おまえが助かったならそれでいい。その代わり、もう二度と死のうなんて考えるな。俺はおまえの恋人にはなれないけど、ちゃんと大事な友達だと思ってるから』
そう告げると、葵は号泣しながら何度も頷いていた。
一方、
『会社の方は私に任せて』
仙台から駆けつけてくれた麻里奈が、しばらく仕事を手伝うと申し出てくれた。
俺自身も病室にパソコンを持ち込んで、会社の方は何とかなったけれど。
気がかりなのは鈴乃のことだった。
『村瀬さん、まだリハビリは早すぎます!!』
入院中、何度も無理をして怒られた。
とにかく一日も早く鈴乃を迎えに行きたかったのだ。
そして、5カ月間後、後遺症も残らずに無事に退院の日を迎えた俺は、その足で鈴乃の会社へと向かった。
けれど、
『仙道は会社を退職しております』
返ってきた答えに愕然とする。
『それなら、倉本さんという女性に会わせて下さい』
『申し訳ありませんが、倉本も異動になりまして』
『彼女はどこに異動になったんですか?』
『失礼ですが……倉本とはどういったご関係の方でしょうか』
『友人です』
そんなやり取りの途中で、受付の責任者だという男性が現れて、個人情報だから教えられないと断わられてしまった。
仕方なく会社は諦め、そのまま鈴乃のアパートに向かったのだか、表札は違う名前に変わっていた。
慌てて隣にいるおかま、いや、彼の部屋をノックした。
『あら~元気だった~~? また会えて嬉しいわ~。ちょっとだけハグさせて~~ん~~いい匂い』
俺は手厚い歓迎に耐えながら、鈴乃のことを尋ねてみたのだが………。
『お嬢ちゃん? あ~そうそう、引っ越し業者に頼んで一度荷物を引き取りに来たみたいね。鍵も壊したみたいよ』
『どこに行くとか……何か聞いてませんか?』
『ごめんなさいね……私も直接会った訳じゃないから。本当はお嬢ちゃんのお兄さんからも、見かけたら実家に来るように伝えてくれって頼まれてたんだけど』
『そう……ですか』
結局、鈴乃の足取りは掴めずに終わった。
スマホも事故で壊れた後、母親が機種変ではなく新規での購入手続きをしてしまった為、万が一でも鈴乃からかかってくることもない。
不安と焦りを抱えながら、必死に鈴乃の行方を探した。
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鈴乃の同僚に会うはずだったあの日、俺は葵を庇って車に跳ねられ、意識不明のまま病院へ搬送された。
何とか一命は取り留めたものの、頚椎と右足の大腿部を骨折し、全治5カ月の重傷を負った。
『頚椎を骨折している為、後遺症で車椅子になる可能性もあります』
医者からそう告げられたことで、俺は鈴乃の同僚に連絡を取ることを諦めた。
そんな先の見えない状態で、鈴乃の人生を背負うことなんて許されないと思ったからだ。
『零士、ごめん………俺のせいでこんな事になって、本当にすまない。謝って済むことじゃないけど、俺はどんな償いでもするつもりだから』
葵はそう言って、俺に土下座した。
『別にいいよ。おまえが助かったならそれでいい。その代わり、もう二度と死のうなんて考えるな。俺はおまえの恋人にはなれないけど、ちゃんと大事な友達だと思ってるから』
そう告げると、葵は号泣しながら何度も頷いていた。
一方、
『会社の方は私に任せて』
仙台から駆けつけてくれた麻里奈が、しばらく仕事を手伝うと申し出てくれた。
俺自身も病室にパソコンを持ち込んで、会社の方は何とかなったけれど。
気がかりなのは鈴乃のことだった。
『村瀬さん、まだリハビリは早すぎます!!』
入院中、何度も無理をして怒られた。
とにかく一日も早く鈴乃を迎えに行きたかったのだ。
そして、5カ月間後、後遺症も残らずに無事に退院の日を迎えた俺は、その足で鈴乃の会社へと向かった。
けれど、
『仙道は会社を退職しております』
返ってきた答えに愕然とする。
『それなら、倉本さんという女性に会わせて下さい』
『申し訳ありませんが、倉本も異動になりまして』
『彼女はどこに異動になったんですか?』
『失礼ですが……倉本とはどういったご関係の方でしょうか』
『友人です』
そんなやり取りの途中で、受付の責任者だという男性が現れて、個人情報だから教えられないと断わられてしまった。
仕方なく会社は諦め、そのまま鈴乃のアパートに向かったのだか、表札は違う名前に変わっていた。
慌てて隣にいるおかま、いや、彼の部屋をノックした。
『あら~元気だった~~? また会えて嬉しいわ~。ちょっとだけハグさせて~~ん~~いい匂い』
俺は手厚い歓迎に耐えながら、鈴乃のことを尋ねてみたのだが………。
『お嬢ちゃん? あ~そうそう、引っ越し業者に頼んで一度荷物を引き取りに来たみたいね。鍵も壊したみたいよ』
『どこに行くとか……何か聞いてませんか?』
『ごめんなさいね……私も直接会った訳じゃないから。本当はお嬢ちゃんのお兄さんからも、見かけたら実家に来るように伝えてくれって頼まれてたんだけど』
『そう……ですか』
結局、鈴乃の足取りは掴めずに終わった。
スマホも事故で壊れた後、母親が機種変ではなく新規での購入手続きをしてしまった為、万が一でも鈴乃からかかってくることもない。
不安と焦りを抱えながら、必死に鈴乃の行方を探した。