婚活女子とイケメン男子の化学反応
それから、数日後のこと。
その日はちょうど零士達が実家に行く前日だった。
お風呂から上がってきた零士が私のところにやって来た。
「麻里奈。この指輪なに?」
それは英士とお揃いのペアリングだった。
どうやら洗面台に置き忘れてしまったらしい。
英士のイニシャルも入っているから、惚けたって無駄だろう。
私は観念して、零士に本当のことを打ち明けた。
英士が忘れられなくて離婚したのだということを。
「でも……今更そんなこと言ったってもう遅いでしょ! もうどうしていいか分からないのよ!」
気づけば、零士の胸の中で泣いていた。
感情が昂ぶっていたせいで、この胸が誰のものかということまで気が回らなかった。
そして、零士も私と英士の仲を取り持つことに必死だったせいで、私達はこのあと、取り返しのつかない失態を犯してしまうのだった。
……
「遅くないよ、麻里奈。大丈夫だ。まだやり直せるよ」
そんな言葉をかけられて、私はえっ?と零士を見つめた。
「とりあえず明日さ、一緒にうちの実家においで。俺が何とかするから」
零士は可能性のないことを無闇に口にするタイプではない。彼の中に何らかの確証があるのだと思った。
諦めかけていた私の心は一気に期待で膨らんだ。
希望の光が射したのだ。
「でも、鈴乃さんに悪いし」
そう。
明日は鈴乃さんにとっては大事な挨拶の日だったから。
それを思うとちょっと気が引けた。
「大丈夫だよ。鈴乃には明日俺から説明するから」
「迷惑かけてごめんね」
「ホントだよ。おまえが素直じゃないから」
「うん。だよね」
「ほんと手のかかる奴」
「うん。でも、零士はそんな私が可愛いいんでしょ?」
すっかり舞い上がっていた私は、調子に乗ってこんな冗談まで言っていた。
「鼻水垂らしてよく言うよな」
「は? 鼻水なんか垂らしてないけど」
「ほら、俺の服見てみろよ。おまえの鼻水でぐしょぐしょ」
「ちょっと、それ、涙だから」
なんて、零士とじゃれ合ったことを、後から死ぬほど後悔することとなる。