婚活女子とイケメン男子の化学反応
~零士side~
時刻は夜の10時半。
マンションの駐車場に車を止めて静かにエンジンを切る。
助手席には気持ち良さそうに眠る鈴乃。
起こすのはちょっと可哀想な気もするけど、いつまでもここにいる訳にもいかず、俺は鈴乃の頰へと手を伸ばした。
「鈴乃? 着いたよ。鈴乃」
「ダメ………零士さんは渡しません………私のもの」
目を閉じたまま、ムニャムニャと呟く鈴乃。
マジか。
こんなの可愛い過ぎだろ。
今日はどれだけ俺を煽れば気が済むんだろうか。
そろそろ本気でヤバいんだけど。
「鈴乃、起きて。そんな可愛いことばっか言ってると、ここで襲っちゃうよ?」
「はい………お願いします」
「えっ」
いやいや、寝言だよな。
ドキッとしながら彼女の寝顔を確認する。
結構眠りは深いのかもしれない。
「ほら、鈴乃」
肩を軽く揺さぶると、今度は寝ぼけながら俺の首に手を回し、そのままブチュと唇を押し当ててきた。
「コ、コラ、鈴乃」
ここは自宅マンションの駐車場。
住人だって通るだろうし、さすがに、ここでのイチャイチャはマズいだろう。
そう思って鈴乃を離すのだけど、彼女は俺にしがみついてなかなか離れない。
その上、「んっ」と甘い声を漏らしながら、俺に顔を寄せてくるのだ。
「鈴乃…」
とうとう誘惑に負けた俺は、鈴乃のキスを受け入れて、助手席のシートを倒してしまった。
鈴乃に覆い被さりながら深く口づけていると、突然鈴乃の目がパチッと開いた。
「んっ……ちょっと、零士さん、何!?」
鈴乃は驚いた顔で俺の胸を思いきり押し返し、キョロキョロと窓の外を見回した。
「あ……起きたの? 鈴乃」
何て言っていいのか分からずにそう返すと、鈴乃は呆れた顔で俺を見た。
「も~、ここ、マンションの駐車場でしょ? ご近所さんに見られてたらどうするのよ~。だいたいこんな場所で寝込みを襲うなんて……いい大人なのに部屋までも我慢できなかったの?」
「え~~」
何だかひどい言われようだ。
あまりの理不尽さに苦笑いを浮かべると、鈴乃が首を傾げた。
「な、何?」
まあ、きっと、鈴乃に誘惑されたと訴えたところで信じてはもらえないだろう。
「いや……何でもないよ。じゃあさ、頑張って部屋までは我慢するから、ベッドでは覚悟しといてくれる?」
「え?」
「多分、今日は何度もお預け喰らってるから、少し激しくなっちゃうと思うけど、明日は仕事も休みだしいいよね? よろしくね、鈴乃ちゃん」
俺は動揺する鈴乃の頬にチュッと口づけた。
「えっ……いや、ちょっと待って、零士さん」
「激しいのはちょっと困る」とモゴモゴ呟いている鈴乃の手を引き、俺は笑いを堪えながらエントランスへと向かったのだった。