婚活女子とイケメン男子の化学反応
~零士side~
橋川からのメールは、楠木の会社に移りたいからできるだけ早く辞めさせて欲しいという内容だった。
楠木から『公私共に面倒を見る』と言われたようで、これには鈴乃も目を丸くして驚いていた。
「何だか、楠木さんには足を向けて寝られないね」
「まあ、楠木の女の趣味が変わってて助かったな」
なんて、ホッとしながら鈴乃と笑っていると、今度は鈴乃のスマホに橋川からメールが入った。
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To 仙道鈴乃
From 橋川真奈美
突然ですが、近々寿退社することになりました。相手はIT会社のイケメン社長です。
仙道さんも幸せな結婚を望むのなら、うちの会員に戻った方がいいと思いますよ。ここだけの話、仙道さんが狙っているあの彼はうちの社長とできてますから。
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鈴乃がキョトンとした顔で俺を見る。
「私が狙ってるあの彼?」
「葵のことだろ」
「えっ、私って、葵さんのこと狙ってると思われてたの?何でかな」
「ああ……それは、鈴乃が意地悪されないように俺がそういう噂を流してたからだよ」
「えっ、そうだったの!?」
そう…。
橋川には鈴乃が葵に惚れていると思い込ませて、鈴乃が敵認定されないように手を回していたのだ。
「そっか………だから、彼女は私には何もしてこなかったのね」
納得したように頷く鈴乃。
俺はそんな彼女を抱き寄せてボソリと呟いた。
「全く……俺はあいつのせいで、しなくてもいい我慢をさせられたよなあ……。でも、これでやっと、鈴乃と会社でもイチャつける」
「えっ!」
鈴乃が顔をあげた。
「ん?」
「ダ、ダメだよ。会社でイチャつくなんて」
とんでもないという風に鈴乃が勢いよく首を振る。
「え…ダメなの? 二人だけの時にチュッてキスするだけでも?」
「うん、ダメ……社長自ら風紀を乱すようなことしちゃいけないと思う。ちゃんと公私の区別はつけないと」
キッパリと言われてしまった。
「そっか………」
ごもっともな意見に何も言えない。
まあ、鈴乃はそういうところは真面目だしな。
会社でのイチャイチャは諦めるしかなさそうだ。
ガクンと肩を落とした俺を、鈴乃が心配そうに覗き込んだ。
「そんなにしたかったの?」
「まあね、男のロマンですから」
「ロマン…」
鈴乃が目をパチクリとしばたかせる。
まあ、所詮男なんてそんなもんなんですよ。
誰もいないミーティング室に鍵かけて、鈴乃を抱いたらどんなに興奮するだろうとか…仕事中に考えちゃったりもするしね。
思わずため息をつくと、鈴乃が何か言いたげな顔で俺のことを見つめていた。
「ん? どうした?」
「あ、うん…家でならいくらでもしていいよ。零士さんの気の済むまでたくさんしていいから」
鈴乃はちょっと恥ずかしそうにそう言うと、部屋着のワンピースをバサッとソファーの下に脱ぎ捨てた。
彼女が自ら服を脱ぐなんて初めてだった。
しかも、ここは朝日が差し込むリビングのソファー。
いつも電気を消せと大騒ぎする鈴乃が、こんな明るいところで下着姿になるなんて。
ゴクリと唾を呑み込んだ俺の耳もとで、鈴乃が色っぽく呟いた。
「だから許してね」と。
思わずゾクっと身震いした。
「鈴乃。俺…ちょっとヤバいかも」
「え……ヤバイ?」
「うん……ヤバイくらい興奮してる」
「そ、そっか」
「だから、鈴乃が下着を脱ぐところも見たい」
「えっ」
「脱ぐところ……早く俺に見せて欲しい」
鈴乃が目を丸くする。
自分でもちょっと変態っぽい事を言っている自覚はあったけれど、まあ夫婦だし、鈴乃から仕掛けてきたんだから許されるよな。
なんて考えていると、鈴乃がブルブルと首を横に振り出した。
「ちょっと待って。こんな明るいところで脱ぐなんてムリだから。キスするだけなんだから下着まで脱がなくてもいいでしょ?」
「え………キスするだけ?」
ポカンとする俺に鈴乃がコクリと頷く。
「そう、キスするだけ。会社ではできないけど家でならいくらでもいいよって言ったでしょ?」
「じゃあ、何で服まで脱いだ?」
「それは……この方がムードがでるかなって」
「ふーん。そっか」
俺は鈴乃をソファーから抱き上げて寝室へと連れて行き、ベッドの上で組み敷いた。
「な、何するの?」
「鈴乃ちゃんさ、こんな悩ましげな姿を見せられて、俺がキスだけで我慢できるって本気で思ったの?」
「だって……昨日の夜もあんなにしたし、零士さんだってさすがにムリだと思……って…んっ」
鈴乃の口をキスで強引に塞いた。
「俺を煽った責任は今日もしっかり取ってもらうからね……それと、20代の性欲を甘くみるな」
「あっ……零士……さん」
こうして昨夜に引き続き、俺は鈴乃の体をたっぷりと愛しまくったのだった。