シェアハウス
※※※



(……大丈夫。少し、確認するだけ——)


 コクリと小さく唾を飲み込むと、私は目の前のノブに手を掛けた。

 ——あの日。
 ピアスの飾り部分を見つけた私は、北川さんに連絡してみようかとも考えた。
 けれど何の確証もない。それどころか、そのピアスの飾り部分でさえ、今、私の手元にはないのだ。


(何か、他に手掛かりがあれば)


 そう考えた私は、珍しく静香さんが家にいないタイミングを見計らって、部屋の中を確認してみることにした。
 最近自分の身にあった出来事や香澄の事が気になり、私はここ数日悶々としていた。


(この部屋の中を見れば……何か、わかるかもしれない)


 そう思った私は、ゆっくりとノブを回し扉を開いた。
 部屋の中へと入ってゆくと、そこには大きなシルバーの箱が床にポツンと置かれている。周りを見渡してみても、この部屋にはそれ以外に何もない。
 ゆっくりと箱へと近付いてみると、何やらブーンと小さな機械音が聞こえる。よく見てみると、それは大きな冷蔵庫のようだった。


(平置きタイプの、冷蔵庫かな? 洋画で見た事あるかも……)


 趣味の部屋だと言っていたし、静香さんは料理が趣味だとも言っていた。そんなことを思い出しながら、三つある鍵を開けて蓋に手を掛けた。
 少し重たいその蓋をゆっくりと開いてゆくと、徐々に見えてくる箱の中身。冷んやりとした風が中から漏れ出し、私の身体に冷気が触れてゆく。


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