シェアハウス
———!!!!?
「ヒッ……!!!?」
私は掴んでいた蓋から手を離すと、ドスリと床に尻もちを着いた。身体からは一気に血の気が引き、決して寒いわけでもないのにカタカタと震え始める。
開かれた蓋の先に見えるのは、バラバラにされた人の身体——。
「……ヴッ……」
突然の吐き気に、私は口元を抑えた。
凍らされて入っていた、いくつかの身体。その上に、ゴロリと転がる2つの頭部。
目が——合ってしまった。
——あれは、香澄。
涙を流しながらも、懸命に力を振り絞ってズリズリと後ろへと下がってゆく。立ち上がって今すぐにこの場から離れたい。そう思うのに、全く身体に力が入らない。
そのままズリズリと後ろへと下がっていると、トンッと何かが私の背中に触れた。
震える身体で、ゆっくりと後ろを振り返ってみる。そこに見えてきたのは、スラリと伸びた綺麗な脚。
その脚を辿って、ゆっくりと見上げてみると——。
「あ……っ、……ぁ゛」
その先に見えてきた人物の姿に驚き、声にならない声を漏らしてガタガタと震える。
そんな私を捉えた静香さんは、ゆっくりと口元を歪ませるとニタリと微笑んだ。
「真紀ちゃんは……悪い子ね。私のいない間に覗くなんて、ダメじゃない」
ガタガタと震えながら、涙を流して静香さんを見上げる。恐怖でカラカラになってしまった喉からは、もはや声すら出てこない。
「美味しかったでしょ? 沙也加ちゃんと……香澄ちゃん、だったかしら。……真紀ちゃん、美味しそうに食べてたものね」
恍惚とした表情で、舌舐めずりをしてみせる静香さん。
(っ……私が、美味しいそうに……食べ……、た……っ?)
今まで出されてきた夕食の数々が、私の頭の中で一気に蘇った。
「ヴッ……ぐぇェ……っ……!」
私は堪らず嘔吐した。
(あれ、は……っ。私が毎日……食べ、ていた……食事は——!)
そこまで考えると、私は再び嘔吐した。止まらない吐き気と悪寒に、もはや呼吸さえまともにできない。
「……真紀ちゃん」
私の目の前で腰を屈めた静香さんは、私の頬を優しくなぞると嬉しそうに微笑んだ。
「早く食べたくて、仕方がなかったの。楽しみだわ——」
恍惚とした表情で舌舐めずりをした静香さんは、恐怖に震える私を見つめてニタリと妖しく微笑んだのだった。