泣けない少女
「折角の休日だったのに…」
ごめんなさい、と謝罪を口にする。先程からこの調子だ。機嫌が悪い夫を見て、優里は嫌な予感しかしなかった。
優愛は幼稚園に預けている。最近不安で仕方なくて休ませる事が多かった。しかし夫に怒られ、今日久しぶりに幼稚園に送り届けたのだ。
病院の駐車場に車を止め、静かにドアを閉めてカウンセリングルームを目指して歩き出した。
ーーーーーーーーーー
「お待ちしておりました。木下さんですね?私、カウンセラーの宮田と言います」
そんな挨拶もそこそこに、早速宮田さんは夫と対面に座った。
「今奥さんは精神的に追い詰められている状態です。治すには人の手助けがいります。なので、少しでいいので今よりもう少し奥さんに寄り添ってあげてくださ…」
その言葉を遮って夫はやや大きめの声で反論を述べた。
「何で俺が自分の時間を削って寄り添わなければならないんです?自分の時間は自分で使うべきではないですか?」
「…え?」
その言い分にカウンセラーは呆然とした。まさかこう来るとは思いもしなかったのだろう。
「今日だって折角の休日を潰してわざわざ来たんですよ?それなのに言う事はそれだけですか?」
私も、そして宮田さんも言葉を失った。しかし何となく分かっていたことだ。この人は自分の事しか考えていない。私への興味など既に皆無に等しいのだ。
「そもそもこんな病気になったのは自分のせいでしょ?こいつの心が弱いからなったわけですよね?俺は巻き込まれたんですよ、なのに何故時間を割かなければいけないんですか?」
この時優里は心の底から後悔した。何故自分はこんな男を選んでしまったのかと。
ーーーーーーーーーー
夫が先に退出し、宮田さんと二人きりになる。その時彼女の口から零れた第一声は
「すごい夫だね…」
だった。もうそれ以外に言葉が出てこない様子でただただ唖然としていた。
「とにかく、今は薬をしっかり飲んで療養する事に専念しましょう!」
そう言う宮田さんの顔が歪んでいたのは多分見間違えではないだろう。
「……はい」
私は、そう答えることしか出来なかった。
ごめんなさい、と謝罪を口にする。先程からこの調子だ。機嫌が悪い夫を見て、優里は嫌な予感しかしなかった。
優愛は幼稚園に預けている。最近不安で仕方なくて休ませる事が多かった。しかし夫に怒られ、今日久しぶりに幼稚園に送り届けたのだ。
病院の駐車場に車を止め、静かにドアを閉めてカウンセリングルームを目指して歩き出した。
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「お待ちしておりました。木下さんですね?私、カウンセラーの宮田と言います」
そんな挨拶もそこそこに、早速宮田さんは夫と対面に座った。
「今奥さんは精神的に追い詰められている状態です。治すには人の手助けがいります。なので、少しでいいので今よりもう少し奥さんに寄り添ってあげてくださ…」
その言葉を遮って夫はやや大きめの声で反論を述べた。
「何で俺が自分の時間を削って寄り添わなければならないんです?自分の時間は自分で使うべきではないですか?」
「…え?」
その言い分にカウンセラーは呆然とした。まさかこう来るとは思いもしなかったのだろう。
「今日だって折角の休日を潰してわざわざ来たんですよ?それなのに言う事はそれだけですか?」
私も、そして宮田さんも言葉を失った。しかし何となく分かっていたことだ。この人は自分の事しか考えていない。私への興味など既に皆無に等しいのだ。
「そもそもこんな病気になったのは自分のせいでしょ?こいつの心が弱いからなったわけですよね?俺は巻き込まれたんですよ、なのに何故時間を割かなければいけないんですか?」
この時優里は心の底から後悔した。何故自分はこんな男を選んでしまったのかと。
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夫が先に退出し、宮田さんと二人きりになる。その時彼女の口から零れた第一声は
「すごい夫だね…」
だった。もうそれ以外に言葉が出てこない様子でただただ唖然としていた。
「とにかく、今は薬をしっかり飲んで療養する事に専念しましょう!」
そう言う宮田さんの顔が歪んでいたのは多分見間違えではないだろう。
「……はい」
私は、そう答えることしか出来なかった。